「神は不断に与え、顕現の場(محلّ)はその受容能力の実相に応じて受け取る。」(イブン・アラビー『マッカ啓示』)
「محلّ(マハッル)」は、経済制裁(2017年当時)を受けるスーダンにおける商業活動を撮影したシリーズ。グローバリズム的な経済圏から隔離されながら砂漠で営まれる商業空間を撮影。彼らの空間における電飾やモノの配置にはイスラーム文化圏でありながらアフリカ的な魔術性、ないし詩情が立ち現れている。それらの原初的空間を考察することはむしろ、われわれが日々営む商業活動そのものがある種の魔術性を持っていることを逆照射する。
 もともと首都ハルツームにおけるシリア移民の店を撮り始めたシリーズであり、そこにスーダンの人々の営みが不可避的に写り込み展開したという経緯がある。アラビア語で「محلّ(マハッル)」は「店」を意味するが、それはある「占められた場」つまり<占拠>を意味する言葉である。しかし、マスダル(語根)である「حلَّ(ハッラ)」は、そもそも「解く、解決する」というような<解放>を意味する言葉であり、「حلَّ(ハッラ)」からは、<解放>とともに<占拠>という矛盾した概念イメージが派生して生まれている。移民という存在は祖国から「脱領土化」され、異国で「領土化する」運動そのものであり、「محلّ(マハッル)」はそうした結節点に現われる、場の創造であり、<存在ー空間>の建築なのである。
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